さよなら異邦人
「でも何だよね、加瀬って、ちょっと違うよね」

「改まって何だよ。それ、褒め言葉か?」

「アタシにしては最大級の褒め言葉のつもりなんだけど」

「なら許す。で、どう違う?」

「ボーっとしてる……」

「やっぱ褒めてないじゃん」

「加瀬の場合は、いいボーっとなの」

「何だそれ」

「加瀬と一緒に居ると、何も考えなくていいんだ。あんたのボーっとし具合が、安心出来るっていうか。他の男子ってさ、うざったい位にギラついてんじゃん。なんか、いかにもどーよ!みたいな。でも、加瀬は全然そういうとこ無いし」

「人によっちゃ、俺みたいなもんは物足りないって言うぞ」

「言わせとけば。みんな見る目が無いんだよ」

「まるで自分はあるみたいじゃん」

「先見の明には自信有り!」

「俺は先物買いって事?」

「大器晩成って言葉があるじゃん。加瀬は、もう少し自分に自信を持ってもいいんだよ」

「自信ねえ……」

何に自信を持てばいいのか……

それにしても、里佳子が僕の事をそういうふうに見ていたとは、全然気付かなかった。


< 89 / 220 >

この作品をシェア

pagetop