さよなら異邦人
「ね、せっかく学校サボったんだから、ゆっくりデートしよ」

「デ、デートォ!?」

「光栄に思えよ。アタシの初デートなんだから」

「初ってお前……」

それ以上は何も言うなとでも言わんばかりに、彼女は僕の手を掴み、歩くスピードを更に速めた。

僕の右手をギュッと掴んでいる彼女の手は、びっくりする位に柔らかだった。ちょっと汗ばんでいるのか、しっとりと掌に吸い付くような感触だ。

僕達は、ひたすら青山通りを歩き、そのまま渋谷駅まで来た。

途中から、何故かお互いに言葉少なになり、繋いだ手だけが熱を帯びていた。

里佳子はそのまま駅の構内に入り、切符売り場で漸く歩みを止めた。

「電車、乗るのか?」

こくんと頷いた里佳子は、路線案内盤を見上げ、目的地を探しているようだった。

「あった!」

そう言うと、一旦繋いでいた手を離し、自分のバックから財布を取り出した。

彼女が買った切符の行き先は、都心から遠く離れた駅だった……。




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