さよなら異邦人
平日の午前中というせいもあってか、僕達が乗った電車はガラガラだった。

里佳子の様子は終始ハイテンションで、何だか子供が初めて遠くへ行く時のようなはしゃぎっぷりだ。

僕がその事を言うと、

「だって修学旅行以外で電車に乗るのって、アタシ初めてなんだもん」

「マジで?」

「悪い?」

「全然」

さすがセレブなお嬢様。どうりでさっきから窓の外を物珍しげに見ていたんだ。

それはいいんだが、何を見ても珍しく思うのか、僕の肩や腕を叩きながら、

「ねえ、見て見て、ほらあそこ!」

と言っては、特に珍しくもなんともない普通の風景に感動し、

「あれなぁに?加瀬、教えて」

をずっと繰り返された。

何だか、幼い子供と行楽地へ出掛ける、父親のような気分にさせられた。

僕達は二度、電車を乗り換えた。

そして、里佳子のはしゃぎっぷりは、海が電車の窓から見えた瞬間に最高潮へ達した。




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