さよなら異邦人
改札を出て海岸を目指す。

後ろの山間に雲が掛かり、少し風が強く感じた。

明るい栗色の里佳子の髪が、その風でたなびく。

授業を抜け出した高校生のカップル。

海岸。

そして、夏……。

思い切りベタな青春ってやつか?

そのベタを求めにわざわざ電車に揺られて来た里佳子。

なんだか彼女のイメージからは想像つかない。

駅の売店で買ったミネラルウオーターを飲みながら、僕等は砂浜に降り立った。

「持ってて」

里佳子がペットボトルを僕に渡した。

何をするのかと思ったら、靴を脱ぎ始めた。

そして、僕の肩に手を乗せてソックスまで脱いだ。

裸足になった彼女は、

「加瀬も脱ぎなよ。気持ちいいよ」

と言って、波打ち際へと走り出した。

あいつ、マジで青春してやがる……。




< 93 / 220 >

この作品をシェア

pagetop