=キング of ビースト=3
無意識に口を開いた自分は
「ーーーー…く、う。」
名を初めて他人に教えていた。
「くう、な。」
違うーー…
この人にはーー…
「紅雨、紅の雨って書いて紅雨ーー…」
「紅雨、か。」
ーー…ちゃんと名前を呼んで貰ってもいいかもしれない。
いや、呼んで貰いたいー…。
なぜか心がそう叫んでいるような気がした。
“きっとその名前には誰かの覚悟が入っているんだね。”
不意に聞こえてきた声は夜琉の後ろに立っていた璃玖からのモノ。
「どうして?紅の雨に覚悟?どこが?」
反射的に答えた言葉は思ったよりも低い。