=キング of ビースト=3



実際前に進んだとは思っていない。

だって何も解決してないから。今だって凛に会うのが怖い。


結局私は何一つ前に進めてない。眠っていた時はただ休んでいただけ。



千佳は何も答えない私に笑って衝撃の事実を言った。


「…ースキだったの、志音さんの事。」


「はっ?」


「なのにもう、いない…。」


「~っっ!!!」


「だから志音さんの守った由莉だけは絶対に守りたい、そう思ってる。私の親友だし、志音さんの守った人だから。」


「ーー…千佳。」


「もう失いたくないの、大切な人を。由莉を。ーー…時々怖くなる、由莉が志音さんのように居なくなるかもしれないって。」


「そんな事、ないから。」


初めて聞く千佳の本音は弱々しかった。


「金堂兄妹って手に届かないっていうか、儚いっていうかフワフワしてずっと捕まえておく事が出来ない雲の上の存在って感じなの。」


「何それ。」


フッと笑った私を見て千佳も笑った。



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