=キング of ビースト=3
「おはょ」
短く返事をした私に千佳はやたらと話しかけてきて、いつも通りの日常が始まったつもりだった。
でも当たり前の日常は毎日続く訳がない。
当たり前の日常は昨日までだったようで、今日は私にとって絶対に忘れられない苦い記憶に残る1日となった。
事件が起こったのは3時間目の休み時間で、それまではいったって何も変わる事のない時間を過ごしていた。
――――――――
3時間目が終わって私と千佳は4時間目の体育に行く為体育館に移動をしていた時だった。
「次の体育って何するんだっけ?」
「んー確かバレーじゃなかった?由莉は何でも出来るからいーよねぇ。」
「千佳に言われたくないし。この前バドミントンの試合千佳に負けたから!!」
「あれは由莉がよそ見したからたまたま勝てただけじゃん!!」
いつものように下らないいい争いを千佳としていて。
「だって‘由莉’って誰かに呼ばれた気がしたんだもん。」
2階から1階に差し掛かる階段を降りようと足を踏み出した刹那、
ニコニコしていた千佳の顔が私を見た一瞬で強ばり、
「―――――由莉ッ!!」
千佳がそう叫んだ瞬間、背中を強く押され足を踏み外した私は
“許さない…っ!!”
その憎しみの籠った言葉を背に階段から滑り落ちていった。