=キング of ビースト=3
小さく笑った俺に夜琉も笑みを見せてくれた。
でもそれはほんの一瞬で
「夜琉、由莉さんの事だ。」
そう口にしたとたん、顔からは表情が消えた。
「医者に言われた。」
「………ああ。」
「‘由莉さんの指が元のようには動かせいかもしれない’ってーー…」
「………。」
「全く動かない訳じゃない。元のようには難しいそうだ。」
「…なょ。」
「は?」
「ふざけんなよーー…。」
タバコの箱が夜琉の手の内でぐにゃりと形を変える。
瞬間的にヤバいと思った。
そう思った時には
「夜琉ッ!!!!!!!!」
すでに叫んでいた。
「ぁあ!?まじふざけやがって……。潰すーーー…」
「とりあえず落ち着け!!」
そう言った時にはすでに立ち上がっていた夜琉、俺の胸ぐらを強く掴んだ。
「ー…黙れ。てめぇに止められる意味がわかんねぇから。」
吐き捨てられた夜琉の声には深い悲しみとやるせない強い怒りが混じっていた。
でも、このまま‘どうぞ’と言って譲るほど俺もバカじゃない。
死人を出しそうな程の怒りを表している夜琉に、自分の怒りを制御出来ない奴を止めるのは当たり前、だ。
「俺が止めないといけない意味はーー…沢山あるんだよッ!!。」