=キング of ビースト=3
俺の胸ぐらを掴んでいる夜琉の手は微かに震えていて。
それは怒りよりも悲しみの方が大きいような気がする。
「夜琉、怒りに身をまかせるな。周りをよく見ろ。」
「…。」
「夜琉が犯人を潰しても、喜ぶ奴は居ない。むしろ悲しむんじゃないか、由莉さんは。」
「…。」
「自分が怪我をしたから、って自分を責めるはずだ。そんな事夜琉が一番わかってるだろ。」
夜琉は俺の胸ぐらからゆっくり手を離し、そのまま目元に手を置いた。
「後、指の事だけじゃないんだ。」
その姿勢を維持したままの夜琉に話しを続けたら。
「中度の脳震盪おこしていたらしくて、数日間から数週間、注意力の散漫やしつこい頭痛、めまいがする事があるそうだ。」
「…」
「絶対安静にするなら連れて返ってもいいらしい、どうする?」
「…」
「正直俺は連れて返ったほうがいいと思う。」
目元を手で覆い続けている夜琉を真っ直ぐに見た。