=キング of ビースト=3



「夜琉、どこ行くんだよ。」


「…。」


何も答えずに中庭を出ていった夜琉。


その後ろ姿を見ながら俺はため息をついた。


「陽斗来たなら隠れずに出てこいよ。」


俺がそう言えば、さっと木の影から出てきた陽斗。


「若、病院にいるときぐらい気を抜いたらどうです?」


そう言ってきたさっき俺が電話した相手、陽斗が黒の高級なスーツに身をまとい口元を緩めながら立っていた。


「場所なんて関係ないだろ、バレたからって言い訳すんな。」

と俺が言えば小さく笑って


「逆に若が俺に気づかなかったら幻滅もいいところですよ。」

と、皮肉を言ってくる。


陽斗は隠れて俺に近づいて来たが、すぐにバレたのが気に食わなかったのだろう。

でも、逆に俺が陽斗に気づかなくても気に食わない。


「どっちにしろ気に食わないのかよ。」


とボソッと言えばクスクス笑っていた。


「若。」


「んだよ?」


「本当にいいのですか?」


「それをわざわざ確認しにきたのか?」


「はい。若はあれほど組を継ぐのを渋っていらっしゃったのに…。」


「…。」


「一度でも若頭として組を動かせば、

‘組を継ぐ覚悟は出来た’

という事になるのは知っているでしょう?」



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