=キング of ビースト=3
ノックをするとやはり聞こえてくるのは由莉さんの声。
静かにドアを開けるといつかに見た光景が広がっていた。
「由莉さん、」
「…ーはい?」
指のことを、言ってもいいのだろうかー…?
真っ直ぐに由莉さんを見ると、真っ直ぐに見返してきて
「…ふ」
思わず笑みが漏れた。
俺は何を心配していたのだろう、由莉さんはこんなにも強いのに。
「由莉さん、今後の事を説明してもいいですか?」
「…はい。」
夜琉が座っているパイプイスの横に立ち話をする。
「明日退院してもらいます。」
「やった、思ってたより早い。」
嬉しそうに笑った由莉さんに真実を告げる。
「ー……でも、家に戻ってからは絶対安静です。脳震盪の後遺症でしばらくは体調がよくないと思っていて下さい。」
「はーい。」
「後、指ですが………」
俺が言いずらそうに顔をしかめると、わかっているかのように
「もう動かせない?」
にっこり笑いながら聞いてきた。
俺はそれに少し驚きながら答えた。
「全く動かせない訳じゃないんです、ただ以前のように動かせるようにするのは難しい、と。」
「ああー…そんな事。」
と呟いた由莉さんに夜琉が顔をしかめたのが分かった。