=キング of ビースト=3
「辛くて辛くて、どうしていいかわからなくて。……―ごめんなさい。でも、どうしてもダメ。
……―夜琉だけは、夜琉は譲れない。」
「…―っ」
「本当に、ごめんなさい。」
「ち、違うの―…。本当は分かってた。私があなた達の間に入る隙なんてないこと。けど、悔しかった。二人は凄くお似合いで、自分は絶対に貴女には叶わないって分かってたから。」
「…。」
「……―ごめんなさい、突き落としたりして。謝ってすむ事じゃないのは分かってる。だから、これから自分のした過ちを償っていけるように――――『パァン』―――ぇ?」
女が喋っているときに、由莉は手を振りかざして――渇いた音がした。
女は無意識に叩かれた頬に手をおいて、由莉を見た。
「ふふっ、これでお互い様だね。」
「ぇ?」
「先輩が私を突き落としたのと、私が先輩を叩いた事。お互い様だから――…
…―もう忘れて下さい。」
小さく由莉は笑った。