=キング of ビースト=3
ココロとカラダ
明るい日が差し込んでくる病室をぐるりと見渡した。
(よし、忘れ物ない。)
その時ちょうどドアをノックする音が聞こえて私は短く
「どうぞ。」
返事をした。すると部屋に入ってきたのは芯さん1人で夜琉が居ないことに少し寂しい気持ちになった。
「準備出来ましたか?」
いつも少し冷めた目をする芯さん、相変わらず綺麗な整った顔。
「ばっちり。髪切ったんですね。」
以前首元まであった綺麗な焦げ茶な髪は短くなっており、ツンツンしていた。
「…これから、私は組に戻るつもりです」
「…え?」
「夜琉の父親の父親、つまり夜琉の祖父に当たる人が私の唯一上にたつ人。私は長谷組の若頭です。」
「…。」
なんとなく‘やっぱりな’という気持ちになった。確かに芯さんは掴めないし、よく分からない部分が多すぎた。
「びっくりされないんですね。」
「どこか心の奥で思っていた部分があるんですよ。」
「…流石。もう今日が最後になります、夜琉の世話役は。これからは黒い黒い世界で生きていかなければなりません。」
「…っ」
「……―この髪は、その覚悟です。
忘れ物なかったですか?もう行きましょう。」
何も言えなかった。いや言う暇さえ与えてくれなかった。