IN THE CLUB
鈍い金属音がして振り返ると。
男が刃物を地面に落とした。
「ざまぁみろ。」
そう言って男は姿を消した。

「智一・・・。イヤだよ・・・。」
私はバックから携帯電話を取り出した。

119・・・。
「お前は逃げろ。」
うつろな目をした智一が言う。
「イヤだ・・・。」
今度は本物の涙がこぼれた。
智一の意識がなくなったのはそれから数分してからだった。

いてもたってもいられない私は無意識に恭子のケータイのダイヤルを押していた。
「どうしたの?こんな時間に・・・。」
「私もう死にたい・・・。」
「えっ?恵?・・・。」
私はそのまま電源を切った。

数分後に来た救急隊員が智一をストレッチャーで運び出す。
ずっと抱きかかえていた私の白いワンピースは智一の真っ赤な血で赤く染まっていた。

数人の隊員が言った。ここは薬部屋か?

乱雑に散らかったテーブルの上には吸いかけの粉と使い古したポンプ、空になったパケが無造作に置かれていた。警察官が駆けつけ私を保護しパトカーで連行した・・・。




智一が死んだことを私は留置場の中で知った。
白い壁だけを見つめ。私は何度も夢の世界で智一に会った。
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