黒白の彼方


部屋に入ると「テキトーにその辺に座ってろ。」と言われた。

藤原さんは背広を脱いでシャツの袖を捲ると早速調理を始めた。行動が早いなぁ、慣れてるって感じがする。
あたしも何か手伝うべきなんだろうけど、あんまり台所に立たない人が手伝うって言っても多分邪魔だよね…。
でもただ座ってるってのも何だかな…。

そこで少しだけ部屋を見回してみる。

まず目に着くのは部屋の段ボールの箱。2、3箱程度だけどガムテープで閉じられた箱もあれば口が開いたままのものもある。多分引っ越しの片付けが完璧に終わってないんだろう。

隅の方にはビニールテープでまとめられた本がある。
何の本だろ。目を凝らして見てみる。

げ…。あたしの嫌いな化学の本だ。参考に使ってるのであろう高校生向けの参考書やら、もっと小難しそうな本ばっかり積んである。

…ということは藤原さんは化学を教えてるって事だよね。そういえば朝も放課後も白衣着てたし。
生物や物理だったら良かったのに。よりにもよって全ての教科の中で唯一あたしの苦手な化学だなんて…。
赤点取ったらご近所トラブルに発展するかも…。

思わず溜息が漏れる。




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