好きとは言えなくて…
菜美がメールを読んでる間、沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは私と菜美のやり取りを不思議そうに見ていた斉藤君だった。


「そんな悲しい顔してどうかしたんですか?」


「あっ、うん。なんでもないよ」

私はニッコリと笑ながら答えた。


斉藤君にもわかるような悲しい顔してたんだ。
斉藤君がいるんだから気を付けないと。


「本当ですか?
僕には関係ないかもしれないですけど、それでも好き…いえ、友達が悲しい顔してるのに放っておけません」


「斉藤君…」


斉藤君はいつもの大人しい雰囲気から思えない程の大きな声で叫んだ。
真剣な顔は私のことが心配だって表していた。



「もう話したら?
斉藤君は心の底から由衣を心配してる。そんな彼に何も言わない方が酷いんじゃないかな?」

何も言えずに黙っていたら菜美は私の肩をポンと叩きながら優しく諭した。


「……。
斉藤君に酷いこと言うかもしれないけどいい?」


斉藤君を見ながら言うと斉藤君はコクリと頷く。
その時に緊張からか斉藤君の喉仏が上下に動いた。






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