好きとは言えなくて…



*****

ハアー。今日も一日が終わった。
なんか色々あった一日だったな。


今日持ってきた教科書やノート、筆記用具を机から出して自分の鞄に入れていく。

「相変わらず教科書を置いていかないのね」


後ろから菜美のため息混じりの声がして私は苦笑いを浮かべながらも教科書等を入れ終わった鞄を閉めた。


「私はもう帰るけど菜美は部活?」


私は教科書を入れた鞄を肩にかけながら菜美に訊ねた。


菜美はこう見えてもバレーボール部に所属している。バレーボールをしているのに背が伸びないのを気にしてるみたいだけど。
ちなみに私は帰宅部で今日はバイトがある日だったりする。


「うん?
あぁ今日は部活だから一緒に帰れないわ。それよりも…あ・れ♪」


菜美は楽しそうに教室の扉を指差した。そこにはオロオロした斉藤君がいた。


「なんで、斉藤君がここに?」


「多分由衣に用事があるんじゃない?
きっとお昼休みの時の続きが聞けるかもよ」



お昼の話? そういえば斉藤君途中まで言って先に教室に戻ったんだっけ。
結局菜美も教えてくれなかったしね。


「そっか。あのあと斉藤君が何言いたかったか気になるから行くわ。
菜美は部活頑張って。また明日」


私は菜美にそう伝えると左肩に鞄をかけて斉藤君がいる扉へと歩いていった。


後ろから菜美の楽しそうな声で『ちゃんと考えて答えるんだよ!』って聞こえた。


ちゃんと考えて答えるってなんなのさ。

菜美の言葉にそんなことを思ってしまった。




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