好きとは言えなくて…
私と斉藤君の間に沈黙が続く。


私が返事をしないから斉藤君は待ってくれてるのだと思う。
その証拠に私を見つめる目はとても真剣だった。


何か答えなきゃって思うんだけど言葉が見つからない。
だって心のどこかでは斉藤君にすがりたいと思ってしまう自分がいて、でも…それと同時に佐倉君の顔も浮かんだ。


私はどうしたいのだろうか?





「あの…最上さん?」


終わらない自問自答をしていると斉藤君が緊張した面持ちで私に呼び掛けた。


「はい。
あの、斉藤君の気持ちは嬉しい。だけどちょっと考えさせて欲しい」




私から出た言葉はそんな保留というものだった。


それでも斉藤君は嬉しそうな顔で私を見た。
その顔が見てられなくて私は俯いた。


「ごめん。今からバイトだから先に帰るね」


私は斉藤君から逃げるように顔を背けてその場を立ち去ろうとした。


「僕のことを前向きに考えて下さるとありがたいです」


後ろから今までの斉藤君からは想像もつかない大きな声で叫んだ。


私は驚いて後ろを振り向くと斉藤君は私を見てニッコリと微笑んだ。


私には勿体ない程、斉藤君はいい子だってそう思えた。






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