好きとは言えなくて…


バイト着から学校の制服に着替え終わって外に出た。


家に帰る途中にコンビニがあるからそこで何か冷たい物でも買おうと思い歩き出した。


コンビニの前に着くと、


「よっ! 最上」


今、声が聞きたいような聞きたくないような人の声がした。


なんでここに?


そう思いながら振り返った。


「なんで、佐倉君がここに?」


20時過ぎててしかも佐倉君の家に近いコンビニもあるのにわざわざここまで来る必要がない。


「今日の最上、様子が変だったろ? だから気になってここにいれば会えるかと思ってさ」


なんでこの人はこんな時に優しくしてくれるんだろう。しかも様子が変だって気づいてきてくれるなんて。


嬉しくて目が涙で霞みそうになったのをグッと耐えて流れそうな涙を素早く拭った。


これ以上心配はさせたくない。


「私が今日、バイトじゃなかったらどうする気だったの?」


からかい口調で佐倉君に言うと今気づいたように『あっ!』って声を漏らした。



「その時はその時? まぁ、会えたんだからいいじゃねぇか」


佐倉君はバツの悪そうな顔をしながら後ろ髪をかくとコンビニへと入っていった。



「ちょっと!待ってよ!」


私は佐倉君を追うように慌ててコンビニの中に入った。




< 112 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop