好きとは言えなくて…
佐倉君がいた場所はジュースやデザートが陳列された所だった。冷蔵される物が多く並ぶ場所だから冷たい風が頬に当たる。


「じゃあ、オレンジジュース」


私は２００mlパックのオレンジジュースを指さして呟いた。


「お前はオレンジジュースが好きなんだな」


佐倉君は私が指さしたオレンジジュースといつの間にか手にしていた缶コーヒーを持つとレジへと足を向けた。


「ちょっと、佐倉君！？」


佐倉君の行動がわからないまま佐倉君を追ってレジへと向かう。


佐倉君に追い付くと自分の物は払おうと鞄からお財布を出そうとしたら佐倉君に止められた。


「これくらいは俺が出す」


「でも…」


同い年でしかも友達にお金を出して貰うなんてとんでもないという気持ちで言い淀むと佐倉君の溜め息が聞こえた。


「お前は男をたてるってこと知らないのか？
この前も自分の物は自分で払いやがってさ」


佐倉君は拗ねたように呟くとお会計を済ませてしまった。


「ほら、行くぞ」


佐倉君は私の腕を掴むとコンビニを後にする。



コンビニから出る前に店員さんの『ありがとうございました』という元気な声が聞こえた。






< 114 / 175 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop