好きとは言えなくて…
「あの! 佐倉 竜貴さんですよね?」
正門まで行くとどこかで見たことかある制服を着たショートヘアーの女の子が俺を呼び止めた。
誰? その前に俺を睨んでるけど俺、何かしたか?
「ねぇ。竜貴君。知ってる人?」
梢は小さな声で俺に尋ねるけど残念ながら目の前に立つ女の子を知らない俺は『見たことある制服なんだけど知らない人』小声で梢に伝える。
「知らない人なら行こうよ」
小声で呟きながらも梢は俺の手をグッと引っ張りその子の横をすり抜けて行こうとする。
「あたしは最上 由衣子の友達で犬飼 菜美といいます。貴方とお話をしたくてここにきました」
通り抜ける寸前にその子の冷静な声が聞こえて、最上という言葉に心臓がドキンと高鳴った。
そうか。見たことあると思ったら最上の通ってる学校の制服か。
梢に引っ張られるように動いてる身体を足を踏ん張り引きずられないようにした。
急に止まった俺を梢は不安そうな顔で見た。
不安そうな顔をする梢の頭を軽く撫でて『ごめん。今日は一緒に帰れない』俺を一言梢に伝える。
「なんで?」
「この子に用事があることを思い出したんだ」
「知らない人じゃないの?」
「今思い出した。だからごめん。今日は一緒に帰れない。
明日は一緒に帰るからだからお願いだ」
「…わかった。じゃあ先に行くね。明日は絶対に一緒に帰ろうね」
梢は俺に笑顔を向けながら手を振って俺から離れていった。