好きとは言えなくて…
「私は今さっき初めて呼んだんだけどね」


最上さんは顔を俯きつつそう呟いた。


へー。最上さんはそう出るんだ。
多分、俺に聞かれてたとは知らないんだろうな。


そう思ったらなんだか彼女をからかいたくなる。


「そうだっけ? なんか俺が教室から出た後に『たっくん』って聞こえた気がしてたけど?」


俺はニヤリと笑いながら彼女に言った。


すると彼女は驚いた顔で固まってしまった。


最上さんはそういう顔もするんだ。


あまり見たことない顔になんだか笑いそうになってしまう。



最上さんの様子を見ながら楽しんでいるとお店の店長らしき女の人が怒気を込めて声をかけてきた。


「由衣ちゃん。知り合いだから喋るのはいいけど、仕事もちゃんとやってね?」


そういえば彼女は仕事中だったっけ。





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