好きとは言えなくて…
「確かに由衣はいい加減だったかもしれない。
だけど断れない理由もあったんじゃないの?」


断れない、理由…
それは…


「告白してくる人が物凄く一生懸命で、私なんかを好きになってくれる人がいるとは思えなかった。それでちゃんと私を見てくれてるんだって思ったらことわれなかった。
やっぱり私の考えは間違ってるのかな」


私はぽつりぽつりと菜美に話した。


菜美ならちゃんと聞いてると思ったから。


「なるほどね。でも自分で自分を卑下にするのは良くないよ。
私なんてとか思ってたら本当にそこまでの人間にしかならないんだから。あたしは知ってるよ? 由衣のいいところ」


菜美はにっこりと微笑んだ。


「菜美。ありがとう…」


菜美の優しさに涙が出てきて菜美に抱きついた。



いつも思ってた。
ちゃんと私を見てくれないんだって。誰も見てくれないって。


そうじゃなきゃ小学生の頃に仲間外れになんかされてないから。

でもそれは自分で作った壁のせいなんだって思った。
自分の感情を表に出さずにいつか誰かが見てくれるって思って努力もして来なかった。



私は菜美に抱きつきながら子供みたいに泣いてしまった。





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