好きとは言えなくて…


「なるほどね。で、由衣は行くの?」


もう菜美にバレてるのならと思って佐倉君から来たメールの内容について話した。
その第一声がこの言葉だった。

しかも物凄く楽しそうな笑顔で言ったのだ。


私はまた溜め息をつきながら菜美を睨んだ。


「由衣ちゃん? そんなに睨まなくていいじゃない」


「ごめん。明日のバイトはないから暇だし行ってみようかなとは思ってるよ」


菜美が期待するようなことにはならないけど。


「付き合ってない人と一緒に出かけるって珍しいじゃない」


「そうなんだけどね。なんか断れなかったんだよね」

私は窓の方を見ながら呟いた。
窓の外からは野球部が走り込みする声が響く。


「ねぇ。間違ってたらいいんだけど由衣ってその佐倉君のことが好きなの?」


そう聞かれ窓の外から菜美を見ると菜美は真剣な顔をしていた。


なんだ。菜美は面白くて聞いてる訳ではなかったんだ。


「どうだろう? 多分今は好きとかじゃなくて憧れなだけかな。
それに今の私を見たら幻滅されそうだし」


私は苦笑いをしながら菜美を見つめた。
きっと菜美には私の目から悲しみを感じとったんだろう。


その証拠に何も言えずに菜美は私を見つめ返すだけだった。



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