好きとは言えなくて…
紅茶を淹れ終えた私は階段を上がり自分の部屋の前にいた。
紅茶を乗せたトレイを左手に持ちながら自分の部屋のドアを開けようとした。
「ん?」
「犬飼さん。もうすぐ最上さんが戻って来ちゃいますよ」
部屋の中から斉藤君のオロオロした声が聞こえた。
また菜美が何かしてる? あれほど物色しないでって言ったのに。
溜め息をつきながら右手でドアを開けた。
「菜美ちゃん? なにやってるのかな?」
部屋に入るとどこから見つけたのか私の小学校の卒業アルバムを見る菜美とその様子をオロオロしながら見守る斉藤君がいた。
「あっ! 由衣おかえり~♪ ちょっと暇だったから由衣の卒業アルバム見てた」
「うん。お待たせ。
って、なにを勝手に卒業アルバムを見てるのよ!」
私は勉強机に紅茶が乗ったトレイを置いて菜美に詰め寄った。
「佐倉君がどんな人かなって思ったらついね。ごめんよ」
楽しそうに話してた菜美が急に大人しくなったから拍子抜けしてしまう。
菜美が急に私の家に来たのは昨日のことが気になったからか。