好きとは言えなくて…
簡単に説明をすると菜美は物凄く興味津々というように目を輝かせた。


「嬉しいことってなに?
もしかして佐倉君が由衣の気持ちに気付いたとか?」


菜美は興奮のあまり私に顔を近づけてくる。


あの…菜美さん? ここが電車の中ってことわかってる?

まさか顔まで近づけるとは思わなくて菜美から逃れるように後ろに仰け反った。


「菜美。近いから。
もし私の気持ちに気付いてたらいいけど残念ながらそうじゃないんだよね。
佐倉君。明後日に告白するみたいだし」


そうだよね。佐倉君は明後日に好きな人に告白するんだから私が元気ない気がするって思われても何にもならないんだよね。


菜美に気付かれないように小さく溜め息をついていると菜美は物凄く悲しそうな顔をする。


「菜美がそんな顔してどうするの?
私は大丈夫だよ」


電車の吊革に捕まりながらニッコリと菜美に笑顔を見せた。


「由衣はそうやって無理するから。あたしが由衣の代わりに涙を流すの」


菜美の目には涙が溜まっていて私も泣きそうになる。


「菜美。ありがとう…」


私の為に泣いてくれる親友がいるんだから悲しんでばかりいられないよね。




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