好きとは言えなくて…
「確かに斉藤君は鋭いかも。よく人を観察してると思うしね。
この際、斉藤君に乗り換えたら?」


自分自身のことじゃないからって簡単に言い過ぎじゃありませんか?


「そう簡単に乗り換えられたら苦労しないよ。でも斉藤君のこともそういう目で見ておくよ」


斉藤君は今まで付き合ってた人とは違う気がしたから。

だって私が別れを告げるとそこで終わりというように連絡が途絶えるし私にあっても挨拶はしなくなる。今まで付き合ってた事がなかったようにされるのは寂しかった。
それなら元から付き合わなければいいのになぜ付き合うんだろうって考えたこともあった。


「そっかそっか。斉藤君はこれで一歩前進したね」


一人でセンチメンタルに浸っていると菜美の楽しそうな声がして我に返った。


それと同時に私達が降りなければならない駅が次で着くことをアナウンスが教えてくれる。


「あっ。もう次で降りなきゃ」


菜美の言葉を無視して私が呟くと菜美は『もう着いたの? その前に由衣またあたしを無視した』なんて楽しそうに呟いていた。


なにがそんなに楽しいのだろうか。

私は菜美を見ながらそんなことを考えていて電車は緩やかに駅に止まり私と菜美は電車から降りた。


降りた時にちょうど携帯が震えてメールではなくて電話があったことを知らせていた。

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