立入禁止(ホラー×恋愛)
ガラガラガラガラ...
スライド式の扉を開く。
これで何室目だろうか。
闇の廊下を照らすと突き当りが見えるのに、未だ旬を見つける事が出来ないでいた。
入る病室は全て埃と薬品臭い。
今居る病室は窓ガラスが割れ、外からの風の所為で床には枯れ葉や虫の死骸が散らばっている。
足元がザラザラと砂っぽい。
勇は中腰になりながらも病室の奥に入り隅々まで探している。
夏希は扉に近い場所で空気を感じながら病室を懐中電灯で乱暴に照らしている。
テッテッテッテ...
夏希の背筋が凍りつく。
夏希の直ぐ後ろを素足で走る音が聞こえた。
重い空気は感じなかったが、確かに廊下を何かが通り過ぎる音がした。
幸いにもその足音は直ぐに聞こえなくなった。
「この部屋にも居ないな、、、」
勇は振り向いて残念そうに言った。
「、、、次行こう」
夏希は震える足で廊下に出た。
『、、、勇、、、小野?』
その声は間違いなく旬の物だった。