本の姫君と童話の王子様。
しばらくの間そうしていると、突然胸倉を父さんの左手に掴まれて強制的に立たせられた。

「お前は実の親に敵意を向けるのか!?」

父さんが一喝する。

「ヒィッ、あ、あぅ……ご、めんな、さ、い…ごっめ、んなさっ」

それを受けて後悔と恐怖で子どもみたいに泣き出してしまう。

父さんは手を離し、僕は重力にしたがって地面へと落下する。

鉄拳制裁を受けると思っていたら手を離されて、何が起きたか分からなかった。

「お前の意志の固さは分かった。 だから、1年だけ猶予をやる。 高校1年生の間に何か賞を取れ。努力賞以上のものをな。 そうすればお前の夢を認めよう」

「……え?」

コノヒトハナニヲイッテイルンダ?

理解が追いつかない僕を放って父さんは言葉を続ける。

「ただし、それが叶い、本を出版するなどといったことになった際には学費などの必要な費用以外の一切の援助を行わない。 『作家』ならば己の力で金を稼ぐことができるだろうからな。 なお、テストで90点以下をとった場合は問答無用で夢を諦めてもらうぞ。 いいな」

なんとか、父さんが譲歩してくれているということを理解して

「は、はい!」

僕は勢いよく返事をした。


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