きみのとなり
自分でも、一瞬…
何をしているのか分からなくなった。
だって私…
「…未来…離して」
拓ちゃんに…抱き着いてるの…
「未来…はな…」
「拓ちゃん…行かないで…」
「……」
行かないでよ。拓ちゃん…
「…好き……拓ちゃん…だから…」
だから…あの試合の日みたいに…
「河野さんにしてたみたいに、キスしてよ…」
「……」
何…言ってんだろう。
私…
「拓ちゃん…」
「……未来…」
黙っていた拓ちゃんが抱き着く私の腕をゆっくりと外した。
そして、私をジッと見つめる。
「拓…ちゃん?」
ドキドキして拓ちゃんの綺麗な顔を眺める私。
相変わらず黙っている拓ちゃんは、静かに私の顔へ自分の顔を近付けてきた。
…キ……ス…?
その時、あの試合の日での光景がパッと頭に浮かんだ。
汚いと思った。
気持ち悪いと思った。
「っ……やっ!!」
「………」
「あ……」
気付いたら、自然と拓ちゃんから顔を背けていた。