きみのとなり
梢について来た数名の女子は、河野さんを嫌がって他を見てくると言って来なかった。
「…いらっしゃいませ。今宵あなたのお相手をさせていただきます拓恵です。ご一緒に夢の世界へと参りましょう。」
部屋に入った瞬間、“美女”にこんなことを言われたんだ。
もう裕介も私もみんなも、ぽかんとしてそれを眺めていた。
「……拓ちゃん?」
私はあんぐりと口を開けて目の前の美女を指さした。
「…6名様ご案内でーす」
「…ちょ…拓ちゃん!!」
私が美女を「拓ちゃん」と呼ぶとみんな不思議そうに私と美女を交互に眺めた。
「え…拓ちゃんって…えー!?石川先輩!?!?」
田中君は奥にそそくさと入って行く美女を見て、口にわざとらしく手をあててみせた。
「あ!未来ちゃん!!」
「あ…こんにちは…」
美女になった拓ちゃんにキャーキャー騒いでいる梢と田中君。
その横で私に声をかけてきたのは
夏休み、私が倒れた時に拓ちゃんと一緒にいた拓ちゃんの友達だった。