きみのとなり


鈴木君は遠慮がちに私を抱きしめた。



「俺、やっぱり上原が好きだ。石川先輩のこと…諦めなくていいから、俺と……付き合って?」




鈴木君は私を抱きしめる腕に少し力を込めた。




“付き合って”



その言葉が、私の頭の中をぐるぐる回る。




拓ちゃんのこと諦めなくていいって……




甘えていいって……




「っ…」




でも………




「…っ…ごめん…」



「…上原……?」



私は鈴木君をトンと押して彼の腕から自分を解放した。




「っ……拓ちゃんのこと…諦めなくていいって…でも、そんなのずるいよ…それに…やっぱり私は拓ちゃんが好きだから、鈴木君と……付き合えない…」





私は流れる涙を拭いながら、必死に想いを伝えた。




私は拓ちゃんが好き。



「多分ずっと…諦めるとか、できない……」





言い終わって、鈴木君の顔を見れなかった。





きっと、辛い顔してるから…






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