きみのとなり
「あ、ここで大丈夫。お父さんがまた来たら大変だから…」
私は、鈴木君にマンションの前まで送ってもらって控えめにそう言った。
「そっか」
鈴木君はあの日のことを言うと、苦笑した。
「じゃあ、また。勉強がんばろ。合宿もあるし」
鈴木君はそう言って私の頭を撫でた。
「あ…ありがとう…と、斗真君…」
帰ろうとしていた彼に、私はそう言ってみせた。
「…え」
驚いた様子の彼は、ピタリと足を止めると私の方へゆっくりと振り返って、ポカンとした表情を私に向けた。
「今…」
「…“鈴木君”じゃ、よそよそしいかなって…い…嫌なら呼ばない!!鈴木君にするけど…」
「ううん!!すっげー嬉しい!」
「っ…」
彼は、屈託のない顔で笑って私の方へと駆け寄りぎゅーっと抱きしめた。
「と…斗真君?」
「ありがとう」
「…うん」
「…嬉しいんだ」
「うん」
「不安だったから」
斗真君はさらに強く私を抱きしめる。