きみのとなり


「あ、ここで大丈夫。お父さんがまた来たら大変だから…」



私は、鈴木君にマンションの前まで送ってもらって控えめにそう言った。



「そっか」


鈴木君はあの日のことを言うと、苦笑した。



「じゃあ、また。勉強がんばろ。合宿もあるし」


鈴木君はそう言って私の頭を撫でた。



「あ…ありがとう…と、斗真君…」



帰ろうとしていた彼に、私はそう言ってみせた。



「…え」



驚いた様子の彼は、ピタリと足を止めると私の方へゆっくりと振り返って、ポカンとした表情を私に向けた。




「今…」



「…“鈴木君”じゃ、よそよそしいかなって…い…嫌なら呼ばない!!鈴木君にするけど…」


「ううん!!すっげー嬉しい!」



「っ…」



彼は、屈託のない顔で笑って私の方へと駆け寄りぎゅーっと抱きしめた。




「と…斗真君?」



「ありがとう」



「…うん」



「…嬉しいんだ」



「うん」



「不安だったから」



斗真君はさらに強く私を抱きしめる。



< 196 / 338 >

この作品をシェア

pagetop