きみのとなり


梢は何も言わずに笑って微笑んだ。




「あ、あとちょっとしかないよ。花火。線香花火がいっぱいあるからこれやろっか」




火が消えてしまったので、梢がまた新しい花火を持ちに行ったけれど



どうやら残り少しで、梢は線香花火を大量に持ってきた。




「…あ」



「うん?」



私は渡された線香花火を見つめながら声を漏らした。




「…線香花火は……」



「え?何かダメだった?」



火をつけようとしていた梢がその手を止めた。





「…あ…ううん!何でもない!!ごめん!やろう!」



私はあははっと笑って線香花火に火をつけた。




「やっぱりいいねー」



梢も自分の線香花火を眺めながら言った。





「……梢、知ってる?」



「んー?」



「線香花火のジンクス」



「何それ?」



梢がクスッと笑う。




「うん。小さいときにある人から教えてもらったの」




私は紅い花火の先を見つめた。




< 205 / 338 >

この作品をシェア

pagetop