きみのとなり


私はまだ燃えている線香花火を水に入れた。




チュッとさっきの梢の花火よりも弱い音がした。




「ごめん梢、眠くなっちゃったから勉強しないで寝るね。先生にはうまく言っておいて…」



「あ!うん!わかった!おやすみ!」



「おやすみ」



私は早足でその場から離れた。




隠れるように部屋に入った。



「………っ…」



そして、その場に崩れるように座った。



「…っは…っぅ…」



もう、わからないとか言わないって



好きなのは斗真君だけって



決めたのに。




「…っ……」



考えて出てくるのは……




「拓ちゃん……」



拓ちゃんなんだ。




花火を秋にしていたのも



線香花火は花火の最後にやるものだと言ったのも



線香花火のジンクスを教えてくれたのも……




拓ちゃんだから。



だからかな……




今日みたいな日は思い出してしまうよ。







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