きみのとなり


鞄に荷物を詰めながら私は昨夜のことを思い出していた。



ーー『でも、未来のはそうじゃない』




「っ…」




私は……拓ちゃんのこと…




「未来~」



帰ってきた梢の声でハッとした私は、止めていた手を動かした。




「佐藤先生が送り届けてくれるって!」



「ほんとに?ありがとう梢…」


私は梢にニコリと微笑んだ。




「……未来…」



私が微笑むと梢もフッと笑って、私の横に静かに座った。




「あんまり、無理しないでね」


「え?」



何が?と、私はキョトンとして梢を見た。




「…色々、抱えないでってこと。重たくなっちゃうよ」




梢はそう言うとフゥと息を吐いた。




「何でも言わなくてもいいの。吐き出したいときに使ってくれれば」



「…梢」




びっくりした。



梢がそんなこと思ってくれてたなんて。




「……って、らしくないこと言っちゃった!あはは!」



「ううん。ありがとう梢…」



私達は顔を合わせてお互いにクククッと笑った。




< 215 / 338 >

この作品をシェア

pagetop