きみのとなり
部屋がある階について私はエレベーターを降りた。
そういえば、この間、斗真君とキスして真っ赤になって走って階段を駆け上がって
…拓ちゃんとぶつかって
「…あのとき、何て言ってたんだっけ?」
あまりにもドキドキしてたから、拓ちゃんが何か話し掛けてきた内容を思い出せない。
まぁ、そんなにたいしたことではなかったのは確かだ。
「…あ……」
また拓ちゃんのこと…
…でも
いつもは拓ちゃんの言ったことを覚えてないなんてことなかった。
それだけ、進歩したと思うんだ。
だって、私…
斗真君のこと
自分で思ってるより……
「未来…」
「……」
考え事をしながら歩いていたら、名前を呼ばれて顔を上げた。
「おかえり」
まさか、このタイミングで拓ちゃん本人に会ってしまうとは。
「うん…」
私はわざとそっけなく答えてから
「じゃあ」
と言って拓ちゃんの横を走り抜けて部屋に入った。