きみのとなり


パタンとドアを閉める。



「…あは…何だ…できるじゃん…」



私は胸を押さえて一つ息をついた。





拓ちゃんを見ないことなんていくらでもできる。




うん。



もう全然平気。



「……」



私は胸に当てていた手をそっと唇に移す。




斗真君の唇…



「暖かかったな…」




ボソッとそんなことを呟いた。


「…は……何言ってんの…」



わーっ!と一人玄関で叫んだ。




「うるさいわねー。帰ったなら靴脱いで早く着替えてきなさいよ」



ギャーギャー騒いでいたら、リビングからお母さんが顔を出して眉間にシワを寄せて言った。




「…はいはい」



私は口を尖らせて靴を脱いだ。






< 240 / 338 >

この作品をシェア

pagetop