きみのとなり
パタンとドアを閉める。
「…あは…何だ…できるじゃん…」
私は胸を押さえて一つ息をついた。
拓ちゃんを見ないことなんていくらでもできる。
うん。
もう全然平気。
「……」
私は胸に当てていた手をそっと唇に移す。
斗真君の唇…
「暖かかったな…」
ボソッとそんなことを呟いた。
「…は……何言ってんの…」
わーっ!と一人玄関で叫んだ。
「うるさいわねー。帰ったなら靴脱いで早く着替えてきなさいよ」
ギャーギャー騒いでいたら、リビングからお母さんが顔を出して眉間にシワを寄せて言った。
「…はいはい」
私は口を尖らせて靴を脱いだ。