きみのとなり
バタンと玄関のドアが閉まる音がして、お母さんがでかけたことを確認してから私はキッチンに向かった。
「あ~…いいな。ケーキ…」
マックなんて寄ってないし、胃だってムカムカしてないし、お腹ペコペコだ。
グ~っとお腹が鳴る。
「はぁ…」
私はパンを2枚トースターに入れて焼きはじめた。
「いいな」
イスに座ってボソリと呟く。
でもお隣りにはもう行かない。
行かないよ。
避けなきゃいけない。
『俺の隣にずっといて』ーー
もう…行かない。
会わないよ。
ふぅとため息を吐いたと同時に、チンッとトースターが鳴ってパンが焼けたことを教えた。
こんがりおいしそうな匂いが部屋中に漂った。
その匂いで何だか寂しくなった。