きみのとなり
拓ちゃんの試合
夏休みになった。
周りは休みでも受験生には休みはない。
休みの最初の2週間は学校の課外講座がびっしりと予定に詰まっていて
あとは課題を終わらせて受験勉強だ。
「おはよー」
私はうちわでパタパタと自分を扇ぎながら教室に入った。
「あ!未来!おはよー!」
エアコンが程よく効いている教室。
入った瞬間に顔に冷たい空気がかかった。
「涼しー」
「先生が朝早くからつけてくれたの」
私はそうにっこりと笑う親友の“渡辺梢”の隣に「ふーん」と相槌をうちながら座った。
「今日は早かったね?」
「え…」
「だって、ほら時計」
私は少し驚いて、教室にある時計を見た。
「8時…」
遅刻しちゃうから早く家を出た。
そうしたら拓ちゃんがいて…
でも河野さんが来て…
そうか…私、走ったから…
「…どうしたの?何か…あった?」
梢は私の眉間にシワが寄った顔を見て、心配そうに顔を近付けてきた。
思わず、泣いてしまいそうになる。