きみのとなり
「珍しくぼーっとしてたな」
「え?」
その日の帰り道、斗真君が笑いながら言った。
「佐藤先生の授業はいつも真面目に聞いてるみたいだけど。何か…」
「寝不足で…!」
「寝不足?」
「う…ん…ほら!勉強してて…!」
「ふーん」
寝不足っていうのは本当。
でも…
拓ちゃんのことで
なんて口がさけても言えなかった。
「じゃあまたね!」
マンションの前までくると、私は斗真君にニッと笑顔を向けて手を振った。
「また!」
斗真君もいつもと同じように手を振替してくれて、自分の家へと帰って行った。
「……」
これが幸せなんだ。
だから、もう私は……
「っ…とーまくーん!!」
遠くなった背中に呼びかけると、斗真君は驚いた様子で振り返った。
「どーしたー!?」
「あのねーー!!」
「おーー」
「っ…クリスマスー!!あとちょっとだねー!!」
「おーー」
「すっごく、楽しみーーー!!」