きみのとなり
しばらくすると、はぁというため息が聞こえてきた。
『未来ちゃん』
さっきまでとは違って、河野さんは優しい声で私の名前を呼んだ。
「はい…」
『私は行けない。ごめんなさい』
「ど、してですか…」
『拓海が好きだから、行ってあげたいよ。でも、私じゃない』
私は携帯をギュッと握りしめた。
『私じゃないから。行けない』
それじゃあと言って、河野さんは電話を切った。
ツーツーと電子音が虚しく響く。
「ごめん!お待たせっ!……て、え?未来?」
斗真君が泣いている私を見つけて、慌てて駆け寄ってきた。