きみのとなり
ベランダから部屋に戻る。
自分の部屋のベランダに戻るとなんだかわからないけれど、ぶわっと涙が溢れてきた。
「っ…バカみたい…」
私は、バカだ。
鈴木君をほったらかして、何やっているんだろう。
決めたのに。
もう、拓ちゃんには…
拓ちゃんには…
関わらないって。
決心なんか、ぶれぶれで。
そんな決心なんか、しなければよかったのかな。
鈴木君を傷つけて、拓ちゃんからも目をそらして…
最低だ、私。
結局、拓ちゃんのことほっておけないんじゃん。
はっきりできなくて。
えらそうなことばかり考えて。
最低だ、私。
最低…
「っ……」
バンッーー!
「!?」
「未来!」
ベランダの窓が勢いよく開いたと思ったら、ふわりと、後ろから抱き締められた。
一瞬、何が何だかよくわからなかったけれど、抱き締められた自分の背中からその人のぬくもりが伝わってきて、安心する匂いも伝わってきて…
「拓ちゃん…」
「ごめん…未来。泣くなよ…ごめん、謝るから…」
「っ……拓ちゃんには」
「関係なくないだろ…」
「関係ない…離して…」
「嫌だ」
「っ…拓ちゃん…」
拓ちゃんはギュッと私を抱き締める腕に力を込める。
「俺のせいだろ?あいつとほんとはクリスマス過ごすはずだったんだろ?」
「…そうだよ。さっきまで過ごしてたもん。拓ちゃんのせいだよ…」
振りほどいて行かなくちゃ、戻らなくちゃ。
戻らなくちゃ、なのに…
「拓ちゃんのせいだよ…拓ちゃん……」
「うん」
振りほどけなくて……
「未来」
「……」
「ずっと言わないでおこうと思ってた。でも、もう嘘つくのやめる」
早く、戻ればよかったんだ。
鈴木君のところへ。
「未来」
「…」
「好きだ」