きみのとなり
第6章
鈴木君
「好きだ」ーー
なんでよ。
今さらなんでそんなこと言うの?
拓ちゃん…
妹みたいって言ったじゃん。
だから、私……
「…ん……」
朝の日差しと寒さのせいで、私は目を覚ました。
「……」
ぼーっとしてベランダを眺める。
昨日…
「好きだ」
私を抱き締めながら拓ちゃんはそんなことを言った。
「…は?何言ってんの?拓ちゃんには河野さんがいるじゃん」
「別れた」
「なんでよ!エッチもしたんでしょ!」
「……してないよ」
「っ!嘘!前に制服はだけた河野さんが拓ちゃんちから出てくるの見た!」
「あれ、ヤってない。河野に迫られたけど断ったらあいつがキレて出ていっただけ」
「嘘…だ……」
そんなの。知らないよ。
「妹みたいって言ったじゃん!」
「あんなの、嘘に決まってるだろ」
「なんでよ!なんで…」
嘘なんかついたの……
「お前が、生まれたとき、妹ができたみたいですげー嬉しかった。でも段々そう見れなくなってた。でも、お前は平気で俺の部屋にも来れるし、意識なんかされてないんだって思った。さのあとも好きなんてお前は言ってきたけど、違うって分かってたから。」
なに、それ……
「ずるい」
「…ごめん」
拓ちゃんは私を抱き締める力を緩めようとしなかった。
「……私…斗真君と付き合ってる」
「うん」
「今好きなのは斗真君だよ」
「…うん」
「辛いときだって嬉しいときだって、いつもそばにいてくれるんだよ」
「うん……」
私はふぅと一度息を吐いた。
「拓ちゃんとは、違う」
私を抱き締める拓ちゃんの腕をゆっくりとほどいた。
「たくさん傷つけちゃったけど、もうこれ以上傷つけたくない。だから、私は斗真君の隣にいる」
もう迷っちゃいけないよ。
だからどうか…
「拓ちゃん、ごめんなさい」
私は拓ちゃんに背を向けたままそう言い放った。
「…そうか。……わかった」
拓ちゃんはそう言ってベランダから帰って行った。
拓ちゃんがどんな顔をしていたかは分からない。
だって、見れないよ。
見たら、また決心が揺らいでしまうから。