きみのとなり
「俺、未来が帰ったあと、やっぱり石川先輩には勝てないのかな~って考えててさ」
斗真君はポツポツと話し出した。
「泣きながら石川先輩のところに行かなくちゃって言う未来を何度も思い出して、正直終わりかなって思ったりもしたんだ。」
「うん…」
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
斗真君はこんなに好きでいてくれているのに。
私は……
「でも、石川先輩のこと引きずっててもいつか俺だけになってくれればいいって言ったのは俺だし、やっぱり石川先輩に未来のこと渡したくなくて……」
私はギュッと拳を握りしめた。
「斗真君!!」
突然、勢いよく立ち上がった私を見て、斗真君は目を丸くした。
「ごめんなさい!」
「え?」
「私、斗真君に甘えてた!拓ちゃんのこと引きずっててもいいって言ってくれたのに甘えて、斗真君の気持ち考えてなかった。」
斗真君は優しいから、平気な顔してくれてた。
でもそれじゃダメだ。
「正直に言う。私、まだ拓ちゃんのこと好きな気持ちが大きい。でも、そうじゃなくて、斗真君のことちゃんと好きになりたい。だから、もう秘密にしない。隠し事しない。だから、だから斗真君も思ったこと言って。ムカつくことも何でも言ってほしい。私も何でも言うから。」
ちゃんと言うから。
「ちゃんと伝え会おう。」
思わず鼻息が荒くなってしまった。
そんな私を丸くなった目で斗真君は見つめる。
「……な、なんか言って?」
私は恥ずかしくなって手で顔を覆う。
「…ぷ」
「え?」
「はははっ!ぷ、ははっ!……うん、ははっ!そうだね!はは!」
斗真君はお腹を抱えて笑い出した。
「うん。そうだね。うん。俺もちゃんと言うよ。伝える。」
そう言うと斗真君は私の手を両手で包んで微笑んだ。