きみのとなり
拓ちゃんの名前が意外なところで出てきて、また私は慌ててしまう。
「…な…どう…して?」
「上原、今日泣いて学校来た?」
「…学校で…泣いた」
「やっぱり。泣いたんだ。顔見て分かるよ。だから、上原が泣くなんて石川先輩と何かあったのかなあ…って思って。付き合ってたらケンカだろうし。付き合ってなかったら泣くほどのケンカしねえだろ?」
鈴木君は顎を机に付けて、私に向かって上目遣いでそう言った。
この人、意外に周りを見てる…
「…付き合って…ない」
「…じゃあ、お前の…」
「言わないで!!!」
私はガタッと音をたてて、イスから立ち上がっていた。
「っ…言わないで…」
「上原…」
もちろん周りはびっくりしている。
梢も田中君も。
「おい、上原。どうした?」
先生が心配そうに私に問い掛ける。
「…すみません。調子悪いんで、帰ります…」
「そうか…風邪ひくなよ」
「はい…さようなら…」
私は鞄を持って、梢のことも田中君のことも
当然、鈴木君のことも一度も見ずに教室を出た。