きみのとなり
体育館に移動して、どうでもいい校長先生の話を聞いて。
ぼーっとしてたら終業式が終わっていた。
大掃除も終えて、帰り支度をしていると、斗真君が私のところへやって来た。
「未来!帰れる?」
「うん。帰ろうか」
「うん。」
斗真君は優しく微笑んだ。
優しいな。
傷つけたくない。
こんな優しい人、いないもん。
だから、言っちゃいけない。
……でも…
それでいいの…?
「未来?」
突然立ち止まった私を不思議に思ったのか、斗真君も立ち止まる。
「あ、のね。斗真君、あのね。私…」
言うべきか、言わないべきか…。
「…うん。言って?未来。大丈夫だから。」
斗真君はまたいつもの笑顔を浮かべる。
「っ…私っ…拓ちゃんに」
告白された
って言おうと思った。
のに……
「ストップ」
「むぐっ!」
後ろから口を塞がれた。
振り向かなくても誰だか分かってしまうのが悔しい。
「それは言わなくていい」
「むーっ!」
く、苦しい!
「石川先輩……未来が苦しそうなんで口に当ててる手、どかしてもらえます?俺の大事な彼女なんで」
斗真君が拓ちゃんを睨む。
「ああ、悪い。大事な彼女との時間邪魔しちゃって。でも未来はお前の彼女でも俺の幼馴染みでもあるから。用事あるからちょっと邪魔したんだけど。ちなみにこいつの母親に頼まれた用事だから。あ、父親にもな。」
そう憎まれ口を叩く拓ちゃんは、やっと手を離してくれた。
く、苦しかった!
鼻まで塞ぐから死ぬかと思った。