きみのとなり
お別れ
次の日。
私はあの公園に斗真君を呼び出した。
今度は斗真君よりも早く公園来た。
ベンチに腰かけて、ぼーっと景色を眺めていると
「未来!」
斗真君がやって来た。
私があげたマフラーと手袋をして。
「座って?」
「ありがと」
斗真君はニコッといつもの笑顔を見せる。
一瞬、そのせいで決意が鈍る。
でも……
「私、斗真君とはこれ以上お付き合いできない」
「……なんで急に?」
怒られると思ったけど、斗真君はいたって冷静だ。
「やっぱり、私の中で、拓ちゃんは消せなかった。」
「それでもいいって俺、言ったよ。」
「うん。斗真君はそうやって言ってくれたけど。やっぱり、拓ちゃんは私の中から消えてくれないんだよ。それに……私も、私の中から消したくない。」
さーっと冷たい風が吹く。
「石川先輩のどこがそんなにいいわけ?」
「……私自身も、よくわかんないんだよね、実は」
私は力なく笑ってみせた。
「昨日ね、拓ちゃんに河野さんから電話が来てね?少し声が聞こえちゃって。好き。拓海じゃなきゃダメ。って泣いて拓ちゃんに河野さんが話してて。泣いてたから拓ちゃんも今から行くって言って河野さんのところに行っちゃったの。そのとき、あーまた行っちゃっうのかって思ったときに、行っちゃダメって咄嗟に思ったの。」
「……」
「そのときに、これが本音だったんだって思ったの。それと同時に、斗真君への好きは、甘えだったんだってわかった。好きって言い聞かせて斗真君に甘えてた。」
だから私は
「斗真君とこれ以上付き合えない。拓ちゃんを消したくないって思ってるから。ごめんなさい。」
私はベンチから立ち上がって、斗真君に頭を下げた。
「……やっぱりな~」
「え?」
思わず顔をあげて斗真君を見る。
「そんな気はしてたんだ。未来とこやいだここで話したときも。そのあとも。」
「斗真君…」
「それに、石川先輩の話するときの未来の顔。見たことないくらいにくるくる表情が変わるんだ。俺にはできない。」
斗真君はそう言うとふっと笑って私を見た。
「石川先輩に告白されたんでしょ?」
「え……」
「分かるよ。見てれば。言おうとしてくれてたのも分かってた。」
「ごめんなさい。」
「……本当に好きだったよ。でも、やっぱり、石川先輩より好きになってもらえなかったのは悔しかったな。」
「ごめんなさい。……ありがとう…」
「うん。それじゃ……」
「バイバイ……」
私は、涙が出そうになるのをぐっと堪えてその場を立ち去った。
傷つけてしまったから、私は泣いちゃいけない。