きみのとなり
怒られちゃった。
そうだよね。
梢が怒るのも無理ない。
梢は田中君と微妙な距離ですごくもやもやしてて。
なのに、私は、人の目ばっかり気にして……
嫌な女だ……
私は、家に帰る気にもなれなくて、ドリンクバーのオレンジジュースをおかわりしてストローで少しずつ飲んだ。
私は何のために斗真君と別れたの?
河野さんのところに拓ちゃんが行っちゃったときも、行っちゃダメって思ったのは
本心だったんじゃないの?
「未来ちゃん?」
「え……?」
名前を呼ばれて顔をあげた。
「あ……え……」
「やっぱり、未来ちゃんだ。」
「……河野さん」
いつもこの人は、現れてほしくないときに私の目の前に現れる。
「…これから待ち合わせなんだけどね、早く来すぎちゃったから、ここ、座ってもいい?」
「あ、はい、どうぞ」
座ってもいい?なんて聞かれてダメなんて言えないよ。
河野さんはドリンクバーを注文して、一度席を立ち、カップにコーヒーを入れて戻ってきた。
「未来ちゃん」
「はい」
「私と拓海が別れた理由。聞いた?」
「え……いや、詳しくは……」
急にこの人は何を言い出すのか。
「……バカだなー。拓海。言ってないんだ。未来ちゃんに」
「拓ちゃんが切り出したんじゃないんですか?昨日だって河野さん、拓ちゃんのこと呼び出してたでしょ?」
電話の内容にはあまり触れないでおく。
何を話したか一番分かっているのは本人だろうし。
「呼び出したよ。だって、やっぱり拓海のこと好きだもの。でも、別れたのは私が原因。」
「意味がわかりません。」
「これ話したら、未来ちゃんは怒ると思うけど。」
そう言うと、河野さんはカップに口をつけて、また一口コーヒーを飲んだ。