きみのとなり


「岩村って覚えるかな。」


岩村……って


拓ちゃんの学園祭のときに来てた人だ。



「私、岩村と付き合ってて、まぁ、高校入学のときに別れたんだけどね。それでも忘れられなくて。せめてサッカーには関わっていたくてマネージャーになったの。」


あんまり、聞きたくないけど、私は黙って彼女の話を聞く。



「そこで拓海と出会って。ほら、あいつ誰にでも優しいでしょ?だから、傷心の私は惹かれてくわけ。そんな私をほっとけなかったのかな。拓海は。それから付き合い始めたの。」


「そう……だったんですか…」


知らなかった二人の馴れ初め。


そんなそぶりも見せなかったから何にも知らなかった。


「でもわかってたよ。拓海に大事な子がいるの。未来ちゃんに会ってこの子だっていうのも気づいてた。」


「……そんなこと…」


「でも私意地悪なの。絶対拓海を手放したくなかった。だってもう岩村の一番にはなれないの分かってたもの。でも、拓海なら、まだ望みはあるかなって。」


河野さんはじっと私を見る。



私が嫌いな河野さんの笑顔だ。


「でもやっぱり無理だったな~。拓海の一番になれなかったっていうのもあるけど。やっぱり岩村を忘れられなかったんだよね。だから、私から別れようっていった。」


でも拓海が切り出すか私が切り出すか、どっちが早いかっていうだけだったんだけど。


と、河野さんは言ってまたコーヒーを飲んだ。








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